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【第一話・疑団】

「は〜ひふ〜へほ〜!」

「うわぁ〜ん、バイキンマン返してよ〜、僕のPSP!」

泣き叫ぶ子供を、バイキンマンは愛機・バイキンUFOから冷酷に見下ろした。

「ぐわははは、このゲーム機はもう俺様のモノだ!ぐわははは!」

声高らかに笑うバイキンマン。子供の泣き続ける姿ひとしきり眺めた後、とりあえず満足したのであろうか、バイキンUFOを旋回させ、今まさにそこから飛び去ろうとしたその時だった。
赤い疾風(かぜ)がバイキンマンの横を駆け抜けた。その疾風は彼の周りをぐるりと一周して、彼の目の前で止まった。

「バイキンマン、やめるんだ!もう好きにはさせないぞ!」

「来たな、アンパンマン!ここで会ったが百年目、今日こそ決着を着けようぞ!」

言うが早いか、バイキンマンは矢の如くアンパンマンに襲い掛かる。UFOの底部から伸びたアームには、ご丁寧にも『10ton』と刻印されたハンマーが握られていた。そのハンマーがアンパンマンのあんぱんで作られた頭部に向けて振り下ろされる。

(ビュン)

ハンマーは空しくも、風を切る音を響かせるだけであった。バイキンマンの初撃をひらりと鮮やかにかわすアンパンマン。ベージュのマントが、まるでスローモーションで再生したかのように、ふわりと翻る。
短兵急なバイキンマンの攻撃の回避に成功したアンパンマンは、バイキンマンから十分な距離をとった。かと思うと、今度は急加速しながらバイキンマンの懐めがけ、電光石火の如く猛進する。

「アーーン……パーーーーンチ!!」

アンパンマンの放った鉄拳はバイキンUFOの装甲を貫き、バイキンマンの顎(ジョー)にクリーンヒットした。

「ば〜いば〜いき〜〜〜ん!!」

バイキンマンは、もはやお約束となった捨て台詞を吐きながら、雲際の彼方へと消えていった。

「さすがアンパンマン、ありがとう!」

背中に賞賛と感謝の言葉を浴びながら飛び去ろうとするアンパンマン。一瞬振り向き、無垢に手を振り続ける子供にぱちりウィンクして応えると、次の瞬間にはものすごいスピードで空を飛び、遠ざかっていった。

「よし、今日も任務完了。今日も疲れたな。さてと、この顔もそろそろ旧くなってきてカビ日が生えそうだし、帰ったらジャムおじさんに新しい顔でも……。」

一仕事終えた彼は、いつもの小さな達成感と安堵の感に浸っていた。
しかし、彼には解せない事が二つあった。

一つは、ここ最近のバイキンマン出現回数の増加だった。この前までは月3・4回程度の頻度であったが、今月、十二月になってからは今回でもう7回目だ。最近のバイキンマンのしつこさときたら、異常としか言い様がない。

そしてもう一つは――これは前々からずっと彼の心に引っ掛かっていたことなのだが――

「どうしてバイキンマンは……こうも懲りずに、いつも悪いことばかりしているのだろう……?根はそんなに悪い奴なんかじゃないのに……。」