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【第二話・鳩首】

肌を刺す風もいっそう冷たさを増してきた十二月の半ば。しょくぱんまん・カレーパンマン・アンパンマンの三人は、月に二度のパトロール定期報告会の最中だった。

「ねぇ……僕、思うんだけどさ、最近のバイキンマンの様子……おかしくないかい?」

話を切り出したのは、アンパンマンだった。

「ヘイヘイ、なんだなんだぁ、いきなりよぅ?」

一体何を言い出すのだと、カレーパンマンは怪訝な顔つきでアンパンマンを見つめた。

「いやさ、今月になってからバイキンマン、よく出てくるなって思って……。」

「そういやそうですね。私の所にも、今週だけでもう二度も現れましたよ。」

食パンマンが自分の持ち場の状況を語った。

「ん〜、そうだな、俺んトコも昨日で今月5回目だ。ていうか、そんな頻繁に出てきて大丈夫なのか、あいつ?昨日なんか、腕にギプスつけてたぜ?」

どうやら、やはり他の二人の担当地域でも、同じような状況らしい。
しかし、いくらバイキンマンがタフだからって、こうも短い期間にたくさん戦っていたら、体がもつハズもない。今だってもう体中ボロボロな状態だ。バイキンマンは敵であるとはいえ、アンパンマンは少し心配になってきた。

「懲りねぇなぁ、あいつも。あっ、アレか?あいつ、実はマゾの気でもあんじゃね……あいてっ!」

「マジメに考えろよ、カレーパンマン。」

「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。」

カレーパンマンがジョークをかまし、アンパンマンのツッコミが飛び、しょくぱんまんがなだめる。ボケがカレーパンマン、ツッコミがアンパンマン、その中和役がしょくぱんまん。いつものトリオ漫才が始まった。

「……にしても、妙な話ですね……。少し、探ってみる必要があるかもしれませんね。僕が今度、ドキンちゃんから話を聞いてみることにします。」

「ああ、助かるよ、しょくぱんまん。」

聡明さと顔の広さが売りのしょくぱんまんは、こういう時にやはり頼りになるな、とアンパンマンは改めて思った。

「とか言っちゃってぇ、ただドキンちゃんに会いてぇだけじゃねーのかよ?」

「そ、そんな!僕はただ……。」

しょくぱんまんは慌てて首を振って否定し、そしてバツが悪そうに俯いた。

「どーだかな。俺たちに隠れてこっそり彼女とヨロシクやってんだろ。ったく、ほんとにムッツリスケベだよなァ、しょくぱんまんは。」

「よさないか!言い過ぎだぞ、カレーパンマン!!」

不必要にしょくぱんまんに食ってかかるカレーパンマンに、アンパンマンが叱咤の声を浴びせた。

「ふん、アンパンマンだってメロンパンナの嬢ちゃんと毎晩おアツい夜を過ごしてんだろ?」

「な、なにを……!」

カレーパンマンの咄嗟のフリに、アンパンマンはつい頬を赤らめてしまった。

「ベイビー、ベイビー。ジョークだよ、お二人さん。そんなストーブみてぇにカンカンになってんじゃねえよ。」

悪戯っぽく笑うカレーパンマン。卑屈なヤロウだが、どこか憎めない奴だ。

「いいよな……。お前ら色男には、帰るべき場所も、愛しの姫もいて……。」

付け加えたように、ぼそりとカレーパンマンはこぼした。その笑顔は、少し寂しそうだった。カレーパンマンはいつもはジョークを言ったりしておどけているが、彼は時々そういった孤独の影を落とすのを、アンパンマンは知っていた。

「ゴボン……ったく。とにかく、だ。バイキンマンのことで何かわかったら、連絡してくれ。」

アンパンマンは、恥ずかしさを紛らわしているのか、咳払いを一つして、いかにも落ち着いたそぶりを繕いながら言った。

そう、バイキンマンがここまでしつこいのには、必ず何か理由があるハズだ。子供たち相手に悪事を働くのは許せないことだが、理由がわかれば、ややもすると彼を止めることができるかもしれない……。

きっと何かがあるハズ。バイキンマンを駆り立てる、何かが……。